禅のパスポート

禅語録 無門関no解釈to意訳

◆肥後の神、鉛筆削りの手がそれて「あいたゝたゝ」と、口は云うなり(附/素玄居士 頌・提唱)

無門関 【倶胝竪指】(ぐてい じゅし)第三則 

俱胝老師は、求道者が問答に来るたび、何事も語らず、ただ1本の指を立てて示すだけ。それでも、巷(ちまた)で話題になり、関心を呼んだ。禅庵には、世話をする小僧がおり、使いのついでに見かけると、求道者が声をかけた。

「俱胝さんは、日頃、どんな様子の説法をなさるのだい?」

小僧は見慣れた風でスッと指を立てて見せる。

他愛もないコピペだった。

トコロガ・・ある時、老師の指立て問答を小僧がやって見せている・・との噂を聞いて、俱胝、機至れりと小僧を呼んだ。「わしの説法、どんな様子だ」と、尋ねたトタン・・小僧、いつもの伝で、指を一本、スッとたてた。俱胝、すばやく小刀で、その立てた指をチョン斬った。

ワッとびっくりした小僧、指先から血を吹きだして、泣きながら逃げ出した。

俱胝老師、すかさず逃げ去ろうとする小僧の名を呼ぶ。

小僧が振り返りざまに、俱胝は、問答の「一指頭」・・指を立てたのである。小僧は、一瞬、血の出る指を立てかけて・・自分を忘失。大悟した。

(その後、小僧の名や消息、切られた指の行く末は記述にない)

 

後日談・・俱胝老師が遷化なさる時、我は・・師の天龍から、たったの指一本の「禅=禅による生活」を得たけれども、生涯、使い切れなかった・・と言われた。

*この公案は「達磨安心」の不可得(ふかとく)。日本の白隠「隻手音声(せきしゅおんじょう)片手の声を聞く」の公案、同意です。

ただし・・マネごとでも人は危(あや)めるなかれ。生兵法は大けがのもと。

倶胝和尚には、門前の小僧が相当の禅境(地)に達している・・との見極めがあったからこその禅機・発揚の行動です。

  

         【本則】倶胝(ぐてい)和尚 凡(およ)そ 詰問(きつもん)あれば

   唯(ただ)、一指を挙(こ)す。(禅の質問には指を立てるだけ)

   後に 童子(どうじ)あり。因(ちなみ)みに外(の)人問う。

   和尚 何の法要(ほうよう)をか説(と)く。

   童子も亦 指頭(しとう)に竪(た)つ。(和尚と同じに指を立ててみせた)

   胝 聞きて 遂に 刃をもってその指を断つ。

   童子 負痛號哭(ふつうごうこく)して(あまりの痛さに泣き叫んで)去る。

   胝 復(ま)た 之を召す。(俱胝和尚、すかさず彼を呼び返した)

   じゅ童子 首を回す。(その振り向きざまに・・)

   胝 却(かえ)って指を竪起(じゅき)す。(ジュキ=立てる)

   童子 忽然(こつぜん)として頓悟(とんご)す。(突然に大覚した)

 

   胝 将(まさ)に順世(寂滅じゃくめつ)せんとす。

   衆に謂(い)いて曰く。

   吾れ天龍(倶胝の師から)一指頭(いっしとう)の禅を得て、

   一生 受用不盡(じゅようふじん・使いきれず)と。

   言い訖(おわ)って滅を示す。(亡くなられた)

 

無門曰く、この公案で『ハハ・・ン』と得心しなければ、次のチャンスはないぞ・・

この悟境を手にすれば、釈尊・達磨・天龍・俱胝・童子すべて差異はない。

  *無門曰く、

   倶胝 並びに童子の悟處(さとるところ)は指頭(ゆびさき)の上にあらず。

   もし、このうらに向って見得すれば、

   天龍同じく俱胝並びに童子と自己とを一串に穿却(せんきゃく)せん。

 

指が一本とか・・はたまた両手を開いて全部見せたところで、こだわり、妄想が増えるだけ。

かって、倶胝和尚は坐禅中に、悟道の尼さんに禅床(ぜんしょう)を三回、回られ『道(い)い得れば留まろう』と詰問(きつもん)されて答えられず・・後日、師の天龍和尚に尼さんのことを話したところ、天龍は何も言わず『一指を竪て』て、禅境を曝(さら)け出しました。

俱胝和尚はここで「廓然無聖(かくねんむしょう)」碧巌録第一則(からりと晴れた青空のように)大悟したのです。

その上、義理堅く、一生 指頭禅(しとうぜん)を使い続けて、なお、お釣りが来た・・と大喜び。

ただし指先じゃなく倶胝の腹元・足元をしっかりと見極めることが大事です。

金華俱胝和尚(金華山・・不詳。仏教迫害の武宗皇帝・・845年頃。師は杭州天龍)

碧巌録第十九則「俱胝只竪一指(ぐていしじゅいっし)」と同義公案

 

頌に云く、黄河に太華山あり。洪水の季節に、この山があるため、人々、氾濫に苦しむ。これを巨靈神が難なく手をもって華山を二つに分け、難を除いたとの逸話がある。

俱胝が小僧の指を断って、大悟せしめた功徳と同じ・・との意。

   頌に云く 俱胝、老天龍を鈍置(どんち)す。

   利刃を単提して小童を勘(かん)す。

   巨靈(きょれい)、手をあぐるに多子(たし)なし。

   華山の千萬重を分破(ぶんは)す。

 

●折あれば・・「はてなブログ 禅者の一語」碧巌の散策(碧巌録 講話・意訳)ご覧ください。