禅のパスポート

禅語録 無門関no解釈to意訳

【素玄居士云く】(両堂 猫児を争うのに対して)五歩あるいは三歩

禅のパスポート NO14  

無門関 南泉 斬猫 (なんせん ざんみょう) 第十四則

【本則】中国池州 南泉山 普願(ふがん)老師の禅院で、東西に分かれている僧堂の何百人の求道者たちが、倉の大切な米穀をネズミから守る一匹に猫をめぐって、所有権の罵りあい、大喧嘩になった。

何の罪トガもない猫の奪い合いに、この求道者たちを仕切る南泉老師。やむをえず、包丁片手に登場して、猫の首を捕まえて、吊るし上げて云った。「サア・・誰でもよい、一句、道え。そうすれば猫は助ける。云えないなら、ぶった切る」・・と。

この禅機ハツラツ・・的なきに矢を射れ・・とのご宣託に、並み居る大衆(求道者)、平常は無所得(むしょとく)即無尽蔵(むじんぞう)の悟り顔で、托鉢したり経を上げたりしているのに、黙り込んでしまった(何か、下手な芸当でもして猫の命乞いをすればいいのに、南泉の禅・・血滴々とホトバシル)・・やむなく南泉・・スパリと猫を斬った。

南泉は斬猫して公案をまどかにしたのである。(この公案、猫の霊が憑いている)

 

その夜、帰ってきた趙州が、この話を聞いて、草履を頭にして出て行ったのは、まことに自然の行為。猫もなければ、南泉もない。思慮、分別が微塵もない無造作の働き・・さすが趙州の独り舞台だ。狗子(くす)佛性の公案=「無」と同じで、さらに活発な、天衣無縫である。

この辺の味が禅だな・・(ここまで素玄居士の見解ソノママ)

 【本則】南泉和尚 ちなみに、東西の両堂 猫児(みょうじ)を争う。

  泉、すなわち提起して云く「大衆(たいしゅ) 道(い)いえば、即ち救わん。

  道(い)えずんば、即ち斬却(ざんきゃく)せん」

  衆 對(こた)うるなし。泉 遂に是を斬る。

  晩に趙州 外より帰る。泉 州に挙示(こじ)す。

  州 すなわち履(くつ)を脱して頭上に安(あん)じて出(い)ず。

  泉云く なんじ、もし在(あ)らば、すなわち猫児(みょうじ)を救(すく)いえん。

【素玄居士云く】 

(両堂 猫児を争うのに対して)五歩あるいは三歩。

(趙州の活作略に対して)火事だ、火事だ、お寺が火事だぁ。

        エッサッサ。エッサッサ。

 

【無門曰く】趙州の草履を頭にのせて出て行った禅機を喝破したら、南泉の令「道いえば斬らず」の禅機も納得できよう。

草履なんかに目をつけていたら・・もう駄目だ。

アブナイ、アブナイ。お前さんまで斬られるぞ。

  【無門曰く】しばらく道え、趙州 草鞋をいただく意、作麼生(そもさん)。

   もし、者裏(しゃり)に向かって一転語(いってんご)を下(くだ)しえば、

   すなわち南泉の令(れい)、みだりに行(ぎょう)ぜざることを見ん。

   それ、あるいは未だ然(しか)らずんば、険(けん)。

 

【頌に曰く】趙州が、もし、その場にいたら、逆に、南泉の包丁を奪い取って、南泉が命乞いしたことだろう(無門、南泉の命乞いの場を・・一目、見たくてたまらないようだ)

  【頌に曰く】趙州 もし在(あ)らば、倒(さかしま)にこの令(れい)を行(ぎょう)ぜん。

   刀子(とうす)を脱却(だっきゃく)せば、南泉も命(めい)を乞(こ)わん。

 

【附記】碧巌録では、第六十三則「南泉斬却猫児」(なんせん ざんきゃく みょうじ)と第六十四則「趙州頭戴草履」(じょうしゅう ずたい そうあい)の話は、無門関、従容碌で明らかに連続した説話として記述してある。碧巌録(雪賓重顯)は、南泉普願の禅機と趙州従諗の禅機を、別々に意見するために、故意に二話の公案としたようだ。

この南泉斬猫の則・・殺生を厳禁する仏教寺院で、戒律に厳格な南泉老師の一刀両断の行為は、大乗律に合わない話・・であるのに、後世、寺院の禅者、ことごとく南泉の行為を肯定している。

しかし・・私の意見は少し違う。いかに血みどろに東西の僧たちが喧々諤々(けんけんがくがく)、猫の取り合いをしているから・・といって、南泉は趙州の師であり、数百人の弟子を持つ達道の禅者である。まして猫は、今の愛玩動物とは異なり、米穀をネズミなどから守る大事な役目をもっている。それを、ワザワザ、台所の包丁を隠し持って、争いの真ん中に分け入って、何か、至道、禅機の芸の一つも見せてみよ・・とは、どうも、どさまわりの芝居ががっていて胡散臭いのである。

血で血を洗う公案は、どうにも後世のデッチアゲに思えてならない。

古来、この問答は難透と言われる。他、無門関 第四十一則 達磨安心(慧可断臂 えかだんぴ)ともに、とおり一辺の師家の見解、講釈に、お説ごもっともと、意見できなかった寺僧たちのテイタラクこそ、禅絶滅の元凶であろう。

この詳しくは、碧巌録の六十三則=六十四則で述べた。

ここでは、素玄居士の見解を尊重しておく。